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キャンピングカー生活での食事

旅するより暮らす

2020/11/20執筆

旅するより暮らす

「何日か旅してみて、今の気持ちをシェアしない……?」

と舞ちゃんに言われた時、僕はドキッとした。

出発地点の宮崎を出発したのは9月19日だったが、本格的なVan life旅の出発は、実家の米収穫の手伝いが終わった10月11日。

福岡県の南に位置する筑後市からのスタートで、最初に向かったのは福岡県の北に位置する糸島市だった。

サーファーが集まる糸島の芥屋

糸島市二丈の海

僕らが住みたい場所を見つける羅針盤として、

・山と海が両方ある

・安心安全な食材が手に入る

・子どもが子どもらしく生きることのできる環境

・海外への旅がしやすい

上の4つと、一番大事にしている”自分たちにとって心地よい場所”の両方が掛け合わさった場所を求めて旅をはじめた。

糸島は目に見えて山と海がすぐそばにある田舎町、食材も探せば安全な食材がたくさんあり、福岡市の真ん中にある空港からも車で40分という移住にはもってこいの場所。(後から知ったが、糸島は移住したい市ランキングで1位らしい)

「これからじっくり糸島でVan life生活をして、地元のことを知っていこうかな」

と思っている時に舞ちゃんが少し不安そうな声で話しかけてきた。

糸島の海での家族写真撮影

「Van life 旅が始まって4日だけど、今の気持ちをシェアしない?」

僕はドキッとした。

そして思い返す。

旅をはじめて4日、たった4日だったが、目が回るようなことがありすぎた日々のことを。

調理場所の高さが舞ちゃんに合ってなく、ご飯を作るだけで首に痛みが走るように。

車内でご飯を食べると、あかりちゃんがこぼしたり動き回ったりで辺りがぐちゃぐちゃ。

朝起きるのは6時前なのに、食事・洗濯をどれだけ早くしても出発できるのは12時近くになり、結局出発できずお昼ご飯を作りだす。

洗濯物が大量の日に限って、大雨で布オムツがなくなりかける。

オール湧き水で生活しているが、水がすぐになくなりほぼ毎日のように水汲みに行くことに。

旅2日目に、僕の配慮が全く足りなくて大喧嘩。

などパッと思い出すだけでこれくらい。

ちゃんと思い出せば倍以上出てくる感じだ。

舞ちゃんは話を続けた。

「旅が始まって、本当はものづくりやサーフィン、旅の発信、ヨガだって毎日やりたいのに、何もやれずに終わってしまう。私は狭くて高さも合っていない車で、ただご飯を1日中作っているだけ。このままだと旅を続けていく自信がないよ」

この舞ちゃんの言葉が僕らのVan life旅のリアルな4日間だった。

「楽しいね」と時折お互い言っていたが、苦しい4日間だった。

海のそばの公園で遊ぶ長女の写真

1歳半という一番手がかかる時期のあかりちゃんと一緒に出発した僕らは、楽しさはもちろんあったが、それ以上の大変さに疲弊していた。

Van lifeにまだ慣れていないとはいえ、ふたりでやれば30分で終わることが、子どもがひとりいるだけで3時間以上かかったりする。

そんなに物事が進まないと言った経験は、これまで経験したことがなかった。

家族3人で日本一周できることの幸せ、それは何にも変えがたいことだとは分かっている。

だがこんなにも早く、旅の限界が僕らにやってくるとは思ってもいなかった。

実は僕も「気持ちをシェアしない?」と舞ちゃんが言ってくれた前日に、そのことについて考えていた。

「旅の発信も写真の撮影も、ノートを手に取ることすらできない。自分の時間が1分すらない。どうしたらいいんだろうか?」

考えた。

考えて考えて考えて、そして辿り着いたのが

”衣食住を丁寧にやること”だった。

これまで家でやってきた丁寧な衣食住を車生活でもやる。

ただそれだけを丁寧にやってみようと思った。

まるで場所は変わっても、いい光を探し出すという基本行為は変わらない写真撮影のように。

「僕らは基本をちゃんとしないまま旅を進めていこうとしていたのかもしれない。一度自分たちがやりたいことは全て手放して、Van lifeでの衣食住の基本と改善をやってみない?」

そう話すと、不安そうな舞ちゃんは「よし!やってみよう」という気持ちが表れた笑顔を見せてくれた。

その日から僕らは行動を変えていった。

フローランテ宮崎横の公園での撮影

キャンピングカー生活での食事

衣:毎日朝5時に起きて、舞ちゃんとあかりちゃんが寝てる間に洗濯物を洗って干すまで終わらせる。

食:調理する場所にカゴを置き高さを調節、水を節約するために食べた食器は霧吹きで湿らせ汚れを取れやすくする。旅に慣れるまでは外食もうまく利用する。

住:出発前に車の中の掃除と整理整頓。旅に必要なかった荷物は旅中でも積極的に減らしていく。

上に書いた当たり前のこと、そしてVan lifeの中で生み出されたアイデアによって改善したことはとても小さいように思うが、実行するだけで旅の心地よさは格段に上がって行った。

それに加えて、僕らは動かないことを積極的に取り入れた。

「今日はこの場所から一歩も動かない日にしよう」

と水汲みも、食材の買い出しも遊びも何もしない1日、ただ海の目の前でぼーっとする日を作った。

ぼーっとする日なんて簡単に作れそうだが、「この日は動かない日!」と舞ちゃんと前日、いや前々日から決めてやっと作れる至極の1日だった。

Vanlifeでの夜ご飯

そんな旅より暮らしにフォーカスした日々を送るようになり、僕らはやっと旅を楽しめるようになったのだった。

昨日も今日も、そして今も七転び八起きで旅しながら暮らしている。笑

生きていると、問題が起きない日の方が珍しい。

何かに挑戦、新しいことを始めたときなんて1分、1時間ごとに問題が降りかかってくることは当たり前。

大きな問題が立て続けにやってくることだってあるかもしれない。

そんな時こそ基本に戻ろう。

仕事も、誰かとの人間関係も、問題が大きい時こそ基本に還ろう。

僕は旅を通して”暮らす”という生きることそのものを、これほどまでに知ることができるとは思ってもなかった。

28歳までで、今間違いなく”丁寧に暮らす”ことを考えている自分がいた。

そして28年という月日を重ねても、まだまだ経験したことがなかった問題とそれを解決する力を得れたことに幸せを感じた。

まだ旅は始まったばかり。

これからも問題は必ずやってくるが、基本を誰よりも大切にするイチロー選手のように毎日の積み重ねをやっていこう。

糸島市二丈での家族の風景

溝口直己

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