はじまりへの写真
2020/07/03
自分を信じ続けられる写真を
「ついてくるなよ!」
友達と遊ぼうと家を出たが、今日も後ろからついてこようとする。
全速力で見えないところまで走って、小さな妹を振り払った。
ひとりになれた嬉しさ、でもどこか後ろめたさが入り混じり複雑な気持ちに。
「まあ、いいや」と僕はひとりで友達の家に向かっていった。
それから約20年後。
「お兄ちゃん、プロフィール写真を撮って欲しいんだ」
と妹から一本のラインが入った。
僕が日本一周旅を一旦中断し、大学を辞めて大阪で生きていくことを決めた7年前。
当時、僕はインドで出会ったいっぺーさんとあさこさんご夫婦のところで居候生活をしていた。
妹とはそれまで遊びに行ったことはもちろん、電話もしたこともなかったくらいの関係。
まあ兄弟とはそのようなものだと思っていた。
それなのにその時は何を思ってか、「大阪遊びに来ないか?」と僕は電話をしていた。
まさか来る訳ないよなーと思っていたら、本当に遊びにきて、
なんと妹まで居候させてもらうことになったのだ。
急に始まったご夫婦と僕と妹の4人生活。
約1年住ませていただいた。
よく知らない兄弟二人を、1年間も居候させてくれたことに感謝の想いでいっぱいです。
その時の思い出は楽しかったことばかり。
普通だったら家族に見せたくないことであったり、恥ずかしいことも妹には知られ、この時に兄弟というより友だちみたいになっていったのかなあ。
毎晩のようにみんなで夢を語って、どう夢を実現させていくか話していた。
僕は歌手を目指し、妹は「人を癒したい」と鍼灸の勉強をするために専門学校へ。
お互いで切磋琢磨して、夢に向かって進んで行った。
でもぶつかったり、苦しんだりしたこともたくさんあった。
「部屋をもっときれいにしないと!」
「考え方が間違っている!もっとこういう風にポジティブに」
少しでも妹のためにと、自分本位な気持ちを押し付けては苦しめてしまっていた時期もあった。
それから僕は京都でフォトグラファーに、妹は卒業後すぐに大阪でタイ式マッサージのお店を全て任されスタートさせた。
住む場所も離れ、二人とも仕事に熱中していたこともあり時々連絡を取り合う程度になってしまったが、
「あいつが頑張っているんだから」と気持ちを高める存在になっていた。
まるで仲が良いからこそ絶対負けたくない親友のような存在に。
その関係が僕はとても嬉しかった。
まさか兄弟で、心から尊敬しあえる間柄になれるなんて思ってもなかったから。
大阪に出てきてくれて、一緒に笑ってくれてありがとう。
現在、僕は舞と結婚しあかりちゃんが生まれ、もうすぐ3人で旅に出ようとしている。
妹は家族のために大阪を離れ福岡へ帰っていたが、また新しい場所での新スタートを切ろうとしている。
「女性のための出張マッサージを始めたくて。プロフィール写真を撮ってくれないかな?」
僕は二つ返事で答えた。
「もちろん!どこで撮ろうか?」
そうして撮った大切な写真です。
優しすぎて人のためにいつも頑張りすぎてしまう妹。
新天地ではゆるゆるでね。
Photo by 溝口直己