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木々を集めて来るサバイバル妻

キャンピングカーを買ったら遭難した。

2020/04/21

「お願いだから動いて!」

僕らは暗闇の砂浜の中で、アクセルを踏み続けた。

だが、全くと言っていいほど意味はなく、ただただタイヤが空転しているだけ。

 

「誰か助けて……」

と願っても、こんな田舎で、しかも夜10時を回ろうとしている時間に人が外にいるはずがない。

ましてや今はコロナでみんな家の中だ。

僕らは、身動き一つ取れないまま、真っ暗な砂浜の上で一晩を過ごすことになった。

 

 

「いよいよハイエースがうちにやってくるぞ」

待ちに待った納車日、ワクワクが胸から飛び出してたのが見えるんじゃないかというくらい興奮し、キャンピングカーランドへ向かった。

新しい車の説明を聞き、今までお世話になったルークスに別れを告げ、僕らは家に帰った。

 

だが家にい続けることなんて出来なかった。

 

「誰もいない海へ行こうか」

 

福井の方に、なんと砂浜から海の目の前まで車でいける場所があるらしい。

すぐに支度を始めて、ハイエースに飛び乗り海へ向かった。

 

海に着いたのは夜の9時過ぎ。

周りは本当に何もない静かな田舎の海。

「ここを下って、砂浜に入っていくんじゃないかな?」

舞ちゃんが教えてくれ、僕は坂道を降りていった。

 

間も無く、砂浜が目の前に現れ、波の音が大きさを増し、

「やった!海のそばでキャンピングカーで寝れるなんて最高だ!」

と思い、進もうとした瞬間、ズズズズ……と下に沈んでいくのを感じた。

アクセルを踏んでも踏んでも前に進まなくなった。

そう。

僕らは海についた瞬間に、車を砂浜にスタックさせてしまったのだ。

その時の感情といったら、まさに天国から地獄だった。

まさか、納車した当日に砂浜にスラックする人なんているだろうか?

 

しかも僕も舞ちゃんも砂にはまった経験がなく、勢いでいけるだろうとアクセルやバックを踏み続けた結果、さらに埋まって行くという最悪の状況になってしまったのだ。

 

「どうしよう……」

舞ちゃんが不安そうな表情を見せる。

それもそうだ。

周りに誰もいない海で、たった僕らだけ取り残されたのだ。

 

落ち着け。

落ち着け、大丈夫だ……

舞ちゃんに話しているようで、もしかしたら自分に一番話しかけていたかもしれない。

 

「とりあえず、ご飯を食べて今日は寝よう。明日の朝考えればいいさ」

と僕は車の中で、家から持ってきた味噌汁を温めて、みんなでご飯を食べた。

始めてのハイエースでの就寝は、遭難しかかった状況であったが波の音が心地よく、眠ることができた。

 

 

次の日、6時に舞ちゃんに声をかけられ目が覚めると、外にはたくさんの平らな木の板があった。

「歩いて探してきたの。これでタイヤの周りの砂を掘ったら出れるかも」

スコップも何もない中で、舞ちゃんはサバイバル能力を発揮し、様々な形の木の道具を見つけてきてくれた。

木々を集めて来る妻

早速掘り出した。

無我夢中で掘り続けた。

すぐに腕と足はパンパンになり、いまにも悲鳴を上げそうだったが、

不思議なことにどんどん楽しくなっていく自分がいた。

何種類かの板を用途によって使い分けれるようになった。

気づいたら3時間、掘り続けていた。

ハイエースのキャンピングカー

車の後輪に平らな板を並べる。

舞ちゃんが車に乗りバックギアを踏む。

僕は車を前から押してバックの助けをする。

全ての準備が整い、息を合わせ僕は精一杯の力を込めて車を押した。

 

ぶおおおおおーん!

 

車は飛び跳ねるように、砂浜から脱出して坂を登った。

やった。

やっと抜け出した。

これで帰れるぞと嬉しくてたまらなかった瞬間、坂の途中でまた埋まってしまった。

 

「砂浜から出れたらもういけるよ。脱出は目の前だ」

舞ちゃんに声をかけ、次は坂の砂を整え、板をタイヤにはめ込んでいく。

希望は大きかった。

でも明らかに、疲労が体を覆っていくのも感じていた。

 

しかし、ここからが長かった。

もう一歩だっていうのに、全然動いてくれない。

アクセルを踏んでも、バックに入れても再び動かなかった。

「もう無理かもしれない」

そう思った時だった。

 

舞ちゃんが急に坂の上に歩いていったかと思ったら、

若く、そして力が相当あるだろう体格のいい男の子を見つけたのだ。

話しかけると、地元の高校生で学校も休校になり、たまたま散歩をしていたという。

 

声をかけ、一緒に車を押してもらった。

何度も何度も、トライしては修正、トライしては修正を繰り返した。

声を合わせ、息を合わせ、大きな声を出し僕と男の子は車を押した。

舞ちゃんは怖かっただろうに、バックを思いっきり踏み続けた。

 

みんなが顔を歪めながら叫び、最大限の力を出した瞬間、車が持ち上がった。

最後のチャンスだとみんなが思った。

足が滑ろうと石が飛ぼうと僕らは車を押し続け、舞ちゃんは決してバックから足を離さなかった。

 

そして遂に坂を登ることができたのだ。

 

僕ら3人は、嬉しさのあまり歓喜の声を出し、人生史上一番熱いハグをした。

 

この男の子には本当に感謝だった。

「誰かの役に立つことができて、とても嬉しいです!」

なんて素晴らしい少年なんだと、泣きそうになった。

 

「私、今まで生きてきて、こんなに嬉しかったの初めてかも」

舞ちゃんはそう言って笑った。

生きてきて、一番の嬉しさを感じた舞ちゃんは本当に幸せに満ち溢れていた。

 

真っ暗な夜の後には、必ず輝く朝日が昇って来るように、

ピンチの後には必ずチャンスが来る。

ピンチを乗り越えた者だからこそ、何十倍も成長してチャンスを迎えられるのだとこの時強く感じた。

 

止まない雨はないように、絶対に晴れの日はやって来る。

 

ピンチであれ、チャンスであれ、いや、ピンチだからこそ自分がやりたい目の前のことだけ熱中し、人生最大

の喜びを感じよう。

 

素晴らしい経験をさせてもらったキャンピングカー納車日だった。

琵琶湖沿いでキャンピングカー乗車

 

Written by 溝口直己

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