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里芋パスター

里芋パスターがくれたあたらしい目

2020/01/21

里芋パスター

 

「なんて斬新かつ美味しそうなパスタ何だろう」

ご飯好きの僕の頭には里芋がゴロゴロ入ったパスタのイメージが浮かんで、口の中がよだれいっぱいになっていた。

 

“里芋パスター”

初めて聞いたその言葉は、僕が考えていたものとはまるで違っていた。

初の冬キャンプに行く日の前々日、舞ちゃんが胸が赤くなり、熱を持っていることに気づいた。

「もしかしたら乳腺炎かも…」

熱を測ると38.7分。

「大丈夫、明日までには必ず治るから」

舞ちゃんは続けて言った。

何があっても絶対にキャンプに行く気だ。

 

でも行くのは1月の真冬のキャンプ場。

町に近いキャンプ場とはいえ、大阪北部の能勢で最低気温はマイナス2度の予報だった。

 

僕も行くき満々だったが、あかりちゃんもいて、もし舞ちゃんが何かあったらキャンプどころではない。

「熱が下がらなかったら、キャンプは中止にしよう」

心を鬼にして、舞ちゃんに伝えた。

 

どうしてもキャンプに行きたい舞ちゃんは、あかりちゃんの妊娠中からお世話になっている助産師の友美さんに連絡をした。

「里芋パスターがいいみたい!」

嬉しそうな声で舞ちゃんは言った。

 

「里芋パスタ…」

詳しくは聞かなかった。

でも頭の中では、はてなマークが広がっていた。

そうか、里芋が入ったパスタを食べたら熱が下がり元気になるのかな?

不思議な料理があるものだな。

なんて考えていた。

僕はバカなのかもしれない。

作って欲しいと言われ、作り方をラインで送ってくれたそれは、僕が想像していたものとはまるで違っていた。

 

里芋パスターは、古くから伝わるいわばおばあちゃんの知恵の一つで、熱や腫れを取る冷湿布のようなものだった。

生の里芋に少量の生姜と塩を混ぜ込み、最後に里芋と同量の小麦粉を入れ混ぜこむ。

それをガーゼに薄く伸ばし熱を持っている場所に当てるのだ。

 

舞ちゃんと出会うまでの26年間、何かあったらすぐ病院に行っていた僕にとって、里芋パスターは驚きのものだった。

 

だが驚くことにそれが効くのだ。

熱をみるみる吸収して、舞ちゃんの熱と痛みは1日でなくなってしまった。

 

「本当の旅の発見とは、あたらしい風景を見ることではなく、あたらしい目を持つことにある」

フランスの作家マルセル・プルーストが言った言葉である。

 

僕は家の中にいて、全くあたらしいことに出会い、あたらしい目を持つことができた。

 

里芋パスターよ、ありがとう。

あなたは、自然の力で熱を取ってくれた。

それは真夏の太陽で火照った体の熱を取ってくれる、海のような存在に思えた。

 

これで初の冬キャンプにいけるぞ。

と思った当日、あかりちゃんが発熱でキャンセルに。笑

 

「赤ちゃんには豆腐パスターがいいよ」

舞ちゃんが教えてくれ、早速豆腐を重しにのせ水を切ることに。

 

今回は美味しそうなパスタのイメージは出てこなかったが、あかりちゃんの元気になった姿が頭に浮かんできたのであった。

 

Written by 溝口直己

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