可能性を信じてくれたホームページ写真撮影
2020/01/16
「好きなように撮ってくれたらそれでいい」
「橋本関雪記念館?」
僕は聞いたことのない名前に、正直迷ってしまった。
12月の上旬、今年は紅葉が思ったよりも早くから色づきはじめ、12月はじめには散ってしまいそうな予報も出ていた時だった。
「ホームページの写真をお願いしたいんだ」
連絡をもらったのはフォトグラファーになってから、お世話になっている方からだった。
内容は依頼主の事業の一つである、舞妓さんと海外のお客様とのお出かけ体験風景。
「伝統ある花街の文化を守りつつ、多くの人に、より深い京都を知ってもらいたいんだ」
京都の花街文化に惚れ、「衰退産業にある舞妓さんたちをどうにかしたい」
と事業を立ち上げたことを嬉しそうに話してくれたことを、今でも覚えている。
もちろん力になりたい。
しかしどうしたものか。
橋本関雪記念館なんて聞いたこともないし、どこにあるのかも分からない。
とりあえず調べてみると銀閣寺のすぐそばにあるらしい。
画像も検索して、全体像を掴んでいく。
なんとなく撮影場所のイメージを浮かべることはできたが、最大の問題があった。
「ロケーション場所を下見する時間がない」
ホームページの写真撮影は基本お客様からの要望があり、その要望を叶えるべく撮影場所の下見をするようにしている。
だが、急ぎの依頼だったのと紅葉のハイシーズンが重なりスケジュールがパンパンだった。
今回はお断りさせていただいた方がいいのではないか?
そこまで考えていた時に、一通の連絡が来た。
「好きなように撮ってくれたらそれでいい」
僕はガラスが弾けたように、我に返った。
そうか…
この人は僕の可能性を信じてくれているんだ。
最初から構図を決めていたり、いい光がその時間に来るのを知っているのではなく、いわば行き当たりばったりをどこまで楽しめるか。
自分の感覚を信じどれだけシャッターを押せるか。
その状況にこそ、人を惹きつける写真を残せると言っているような気がした。
撮影日は雨がぱらつく決して撮影向きの天候ではなかった。
しかしお客様、そして自分も最高に喜ぶ写真を残せた。
Photo & Written by 溝口直己