「私、結婚式辞めます」
2019/10/29
楽しみすぎる結婚式撮影
「結婚式辞めます」
僕の心は泣いていた。
たまらなかった。
10月の終わりに、来月結婚式撮影のご依頼を頂いている新郎新婦様と打ち合わせがあった。
おふたりは浜松から京都まで来てくれた。
新婦様は夜勤で、昨日は寝ずに京都まで来てくれたという。
「カメラマンを持ち込めないなら結婚式辞めますって言ったんです」
打ち合わせが始まっていきなり新婦様はおっしゃった。
話を聞くと、おふたりが挙げる結婚式場は持ち込みカメラマンを入れることは禁止になっているそう。
それでも僕にカメラマンとして入って欲しいと思ってくれて、
結婚式自体を辞めるとまでプランナーさんに言ってくれたのだ。
そこまで言っていただなんて、想像もしていなかった。
どれほど勇気を出して言ってくれたのだろうか。
カメラマンとして、これ以上に嬉しいことはあるだろうか。
持ち込みカメラマンが厳しい会場は、今でも日本にたくさんある。
「お二人のための特別な一日なのに、なぜ会場がカメラマンを決めるのか?」
新郎新婦様も、カメラマンも、誰もが一度は考えた問いはまだ続いている。
「そういう業界だから」
その言葉はもう通用しない時代になっているのに。
だがそんなことはいい。
おふたりの気持ちが嬉しくて嬉しくて。
それだけで十分だった。
そしてその願いが叶った。
「溝口さんに撮影をお願いしたいです」
直接目を見ながら言ってくれた。
僕の心は嬉しくて泣いていた。
「よろしくお願いします」
立ち上がって握手していた。
まだ1ヶ月も先だというのに、浜松へ行く支度は万全になった。
おふたりの気持ちを知れば、準備が通ったも同然だ。
「また来月会いましょう」
Written & Photo by 溝口直己